●家裁許可制夫婦別姓(例外的夫婦別姓と言うこともある)とは、2002年6月に自民党の一部から提案された、新しい夫婦別姓制度の形態で、夫婦別姓での法律婚を望む時には、家庭裁判所で審判を受けて許可を得なければならないというものです。
●しかしこの案では、婚姻という全く同じ一つの法律行為をするにあたり、夫婦同姓と夫婦別姓の間で、その成立過程に届出制と許可制の違いという手続き上の極めて差別的な扱いが生じます。夫婦同姓の場合には従来の届出婚主義のまま成立するにもかかわらず、夫婦別姓の場合には憲法第24条に明記された「両性の合意」以外に、国家権力である「家裁の許可」という新たな成立要件が加重されるだけでなく、更にその許可には「職業生活上の事情」「先祖祭祀の主宰」など、法律に明記された、或いは裁判官を納得させるだけの合理的とされる要件を求められます。しかも、もし不許可となれば婚姻自体が成立しないことにになります。即ち、国家権力によって婚姻が制限され得るということです。
●これは個別の婚姻に関しては憲法第24条の「婚姻の自由」という理念に反するだけでなく、婚姻制度という観点では我が国の立憲体制の根幹である憲法第14条の「法の下の平等」という大原則に反します。そのような立法は、一部の受益者の「利便性の実現」という要求があるからといって、また将来の制度見直しを視野に入れるからといって、許されることではありません。
●私は、いくら夫婦別姓制度の実現を是とする立場とはいえ、まがりなりにも「法律学」を冠するウェブサイトの著者・管理者として、このような案を是とすることは出来ません。よってここに「家裁許可制夫婦別姓」という提案に対し、反対の意思を表明します。
●理性的な社会的平等論や男女共同参画論を題目とし、また夫婦別姓反対論者や社会の不寛容を嘆きながら、一方で自らの夫婦別姓への欲求のみによる理由で、このように憲法上の自由と平等を制限する「家裁許可制」案を後押したり黙認したりすることは、ダブル・スタンダードとも言うべき大変な矛盾であると同時に、自らの欲求の実現のためには法体系破壊の危機をも致し方なしとする自己中心的な姿勢を示すことに他なりません。皆様には是非今一度、御自身と他者、御自身と国家・社会との関係を御再考頂き、破綻のない意思形成をなさいますよう、強く諫言致します。
「夫婦別姓の法律学」管理者 エイサク
参考資料
朝日新聞朝刊 2002/7/17 2002/7/24
毎日新聞web 2002/7/16 2002/7/24
時事通信web 2002/7/16