★ネタバレ感想★
金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲
「金田一に捧げぐ」――をテーマにしたアンソロジイ集。個人的な感想を言えば栗本薫センセイの『月光座』が金田一耕助モノに近いと思いましたし、オマージュとしても一級で、最高に面白かったです。ただ、これはふたばが栗本薫センセイの作品によく触れていて伊集院大介を良く知っているからだと思います。そうじゃないと、この作品の味は分からないでしょう。
『無題』 京極夏彦
関口くん横溝正史に出会うの巻(笑)。なぜ無題なのかなって思っていたら、なるほど最後まで読んで分かりました。抜粋された本体は一体いつ書かれるのでしょうか、ファンなら気になるところでしょう。今作の横溝センセイは、人嫌いの自閉症という割に、人懐っこい好々爺という感じで、とても優しげ。
『キンダイチ先生の推理』 有栖川有栖
横溝センセイの生態を現代より透かし見ながら、実はそれが現代で起きたちょっとした事件の謎を解く鍵になっているというなかなか立派なミステリィ。歩きながらものを考えるというのは、実はふたばはよくやっていて、ふと思いついたことを書きとめておく物がなくて困るというのはよく分かりますね。だいたい家に付いたときは、何を思いついたか忘れてますしね(笑)。
『愛の遠近法的倒錯』 小川勝己
これは金田一耕助そのものが当時のまま(?)登場するという真っ向直球勝負な作品。おどろおどろしい幻想的な世界を見せながら、実は論理的という横溝正史らしさが良く出ていると思う。「お国が真実を作る」という動機が斬新。この時代にしか出来ないやはり横溝正史的な動機ですね。そのほかの見所は、やはり、ラストの美しくも妖しい遠ざけることで近づいた愛の形かな。
『ナマ猫邸事件』 北森鴻
最後に書かれているとおりこれは完全なパロディだね。金田一耕助を知っていればいるほど笑えるという。悪ふざけだなと思わないでもないけど、楽しげな雰囲気は伝わってきます。――やっぱり名探偵って死体を増やすために存在しているのね(笑)。
『月光座――金田一耕助へのオマージュ――』 栗本薫
栗本薫が創作した名探偵伊集院大介と金田一耕助の夢の競演(笑)。オリジナル『幽霊座』に対する疑問を新たな形へと昇華した続編ともいえる作品です。ただ、それだけだけに『幽霊座』を踏まえた上でのミズテリイとなっているのが残念といえば残念。ふたばは中学生のころ読んだきりで、もう完全に内容を忘れてしまってました。第一『幽霊座』の内容のネタばれになっているしね。ただ、本当に書きたかったのは、伊集院大介のラストの長語りでしょう。これを読むと、伊集院大介自体が、金田一耕助へのオマージュであることが良くわかります。この伊集院大介の思いは、金田一耕助の後に続く、すべての名探偵の思いでしょう。
『鳥辺野の午後』 柴田よしき
最後のどんでん返し(?)が幻想的で好き。はざまで見たぼくらの一瞬の夢という感じ。金田一耕助へのオマージュとしてもそうだけど、一つの作品として綺麗にまとまっていると思います。金田一耕助ってこんなにまで優しいまなざしを持った探偵でしたよね。――彼が名探偵といわれるのは、この優しさゆえでしょう。――ただ耕助のジーパン姿はなんだかおかしい(笑)。
『雪花 散り花』 菅 浩江
確かに横溝的な前世代世界を求めるとしたら、京都のような古都だろうなと思いつつ、でも同じ前世代的な世界でも祇園のような華やいだ世界と横溝正史の世界はちょっと違うんじゃないかなとも思う。一番違うなと思うのは、金田一耕助は決してこんな推理ゲームみたいなことはしないということ。単発のミステリィとしては面白いと思うけど、「金田一耕助に捧げる」作品としたら、歌の見立てをつかったりと、一見近いようで、実は遠い気がする。
『松竹梅』 服部まゆみ
これも真っ向勝負。堂々たる本格ミステリィですね。双子の使い方が面白いと思います。ただ話の展開が急すぎ、文章を詰め込みすぎ――味わいがないです。そして横溝正史的な伝奇色が薄いのも欠点かな。
『闇夜にカラスが散歩する』 赤川次郎
冒頭の幻想的な雰囲気――横溝正史とは違うものの――から始まって、最終的には理に落ちる。一見違うようで、実は立派な横溝正史的な世界をもった作品だと思います。ただ淡白さが欠点かな。横溝正史の世界はもっと重いのだね。ライト感覚が赤川次郎らしいのかもしれないけど(笑)。主人公と金田一耕助の関わりの現れ方が唐突ではあるものの、まさかこんな風に話が進むとは思わない意外さがありました。
「ぼくは……ぼくは本当にあなたが好きでした。……こよなく尊敬していました。そして、
――伊集院大介(栗本薫『月光座』より)