★ネタバレ感想★
紫骸城事件
上遠野浩平
……世界を蝕んだ魔女リ・カーズが英雄オリセ・クォルトとの死闘の果てに消えた紫骸城。300年の時の果てに、この城では魔導を極めんとするものたちが集い「限界魔導決定戦」が開かれていた。しかし前回優勝者の突然の死から始まり、次々と出場者が謎の死を遂げていく。――これは魔女の呪いなのか?時間がこない限り外に出ることはできない出口なしの呪われた魔女の城にで起こる連続殺戮事件に、「英雄」フローレイド大佐が挑む。「事件」シリーズ第2弾。
前作『殺竜事件』よりはミステリイしてるかな。複雑な模様が単純な一言ですべて明らかになるという図式は非常に好みです。もっとも印象迷彩により「飲む」事を隠蔽されていたという事よりも、中盤で明らかになってしまう転送呪文にそれが仕組まれていた――つまり始まった時には全て終わっていたという事の方が、個人的には衝撃的だったけど。
それとエピローグも衝撃的。ここを読むとなぜ「屍骸」城ではなくて「紫骸」城なのか?ということがちょっとだけ――それが真実かどうかはともかく――見えてくる。
紫骸城のはかつて魔女と英雄が戦って相打ちになった場所ではなかった。魔女の悪意が今でも人々を操り自ら破滅へと追いやる呪いに満ちている場所でもなかった。魔女も英雄もいなくなったあとで人々がそう勝手に思い込んだだけで、「紫骸城」は真ジョと英雄が買いつづける戦いつづける為の単なる装置だったのだ。――城も、英雄も、平和も、悪意も、魔女の呪いも、実はこの物語に現れるものすべて見かけ通りではないのだ。
「屍骸」ではなく「紫骸」なのは、この物語が「偽物」のための物語であることを示しているのだと思う。城にあった竜の骨格がニセモノだったように。大仰な呪いに取り憑かれたと思い込んでいた人々が掛かっていたのはペテンみたいな小さな呪文だったように。英雄フローレイドが自分ではそれを信じきれないように。
正義も悪も悪意も平和も英雄も実は「城」みたいなものかもしれないと思う。
城は外敵から中の人々を守ってくれる砦だ。だが同時に中の人々を閉じ込めておく為の牢獄にもなる。中の人が外に目をむけない限り、城は砦とはならない。守るという努力をしない限り、城は城の中だけを世界のすべてにしてしまう。城によって外敵から守られて人々は平和かもしれないが、いつのまにかその中に住む人々は淀み、人々は城の中でまた争いを起こす。
要は心の持ちようだ。城は城でしかない。正義も悪も悪意も平和も英雄もそれ自体は単なる言葉だ。それが真実何かを示しているものなのか、周りがそう思い込んでいるだけなのか、決めるのは人間だ。それにどんな意味を持たせるのかは人間次第なのだ。紫骸城に魔女の悪意を感じたのはそこを訪れた人間の思い込みに過ぎない。魔女にとっては城は魔力を貯える場所であり魔力が溜まるまで時間を跳躍させる「装置」に過ぎない。
完全な平和が人々を腐らせてしまうことがあるのは、腐らない努力をしないからだ。平和が、城が、どんな意味を持っていくのかは、人間の努力・心持ち次第なのだと思う。
今になってみると、この骨格標本こそが事件そのものの象徴であったような気がする。傲慢で、尊大で、やたら威圧的で――しかし、それはうつろなる骸の
偽物に過ぎないのだ