★ネタバレ感想★


さあ、気ちがいになりなさい
Come and Go Mad and Other Stories

フレドリック・ブラウン


<感想>

 短異色作家短篇集2。
 フレドリック・ブラウンの特色(他の本を知らないので、この作品集について)を言えば、意表ついた設定で始まった物語が、さらに意表を突いた展開を見せ、思いがけない所に着地をする、アクロバティックな作風と言ったところでしょうか。さらにコミカルな作風なようで、実は結構シニカルな毒を持っていますね。

緑の星へ Something Green
 そうか、緑といったら、地球にとっては自然の象徴のような色だけれど、植物の生息する惑星が地球以外で発見されていないことを考えると、自然において極めて稀な色。地球を象徴する色なんだよね。この発想が面白かった。

 ぶっそうなやつら The Dangerous People
 二人の男をどんどん疑心暗鬼に陥らせていく、サイレンが実に効果的に使われています。どちらが犯罪者か、いやどちらでもなかった、というところまでは想像の範囲ですが、その後の展開が、やはり意表を突かれました。――まあ正常と異常の境なんて、紙一重なんでしょうね。

おそるべき坊や Armageddon
 悪魔を封印するのに、風車とか変な設定だなあ。キリスト教ではなくチベット仏教(?)をもって繰る当たり、風変わりさを狙ったのか。それにしても、世界を滅ぼしかねない悪魔が、なんで水鉄砲如きに、と思ったら、なるほど聖水ですか。世界を救った坊やが、そのために父親に折檻されるというラストが皮肉。

雷獣ヴァヴェリ The Waveries
 外界からの侵略ネタだけど、電波による侵略というのが、また変わっているなあ。意志のない(?)侵略者だからか、支配されることはなく、むしろ侵略されたおかげで、それ以前よりも健全な世界になってしまったというのが皮肉。やはり、何かを得るために、何かを失う、というのが世界の法則なのかな。

ノック Knock
 立った2行の文章からイマジネーションされる、素敵なペテン。作家たるもの「……」の中に、これくらいの物語を見なくちゃいけませんね。

ユーディの原理 The Yehudi Pronciple
 言ったことをなんでもしてしまう機械なんて、どんな発想なんだろう。言ったことを現実にする機械が、言ったことなんでも実行する妖精(?)を生み出して、それを自殺させてしまったために機械が動かなくなって――??? 確かに頭の中で考えがグルグル巡って、変になってしまいそうな話だ。

シリウス・ゼロ Nothing Sirius
 『ソラリス』みたいな話しだけど、人のイマジネーションを現実化させるのがゴキブリとは、やはりシリアスは0だ。

町を求む A Town Wanted
 無関心こそ、悪と権力者の最高の拠り所。ちゃんと選挙へ行こうと思いました。

帽子の手品 The Hat Trick
 映画の方も、怪物がバイトしてたのかな(笑)。

不死鳥への手紙 Letter to a Phoenix
 自然に朽ちるより、自らを滅ぼすことで新たに作り直す方が永遠に存続できるという皮肉。食い尽くし消費してしかし自らは存続しつづけるの。――なるほど人類は不死鳥ですね。

沈黙と叫び Cry Silence
 哲学的。とても恐いと思いました。妻を殺したかもしれない男がではなく、駅長の行為が。駅長が他人にその話を伝えることで、その「音」は、存在している、いや存在「する」ことになるのでしょう。

さあ、気ちがいになりなさい Come and Go Mad
 この話の焦点は、ナポレオンだと思っている男が本当にナポレオンだったことではなく、神様が蟻だったということだと思います。フレデリック・ブラウンは、地球を我が物顔で食い尽くしながら繁栄し続ける人間に対して、警鐘を鳴らしたのではないでしょうか? 『シリウス・ゼロ』もそうでしたが、人間にとって取るに足らない小さな虫が、偉大な存在であるという皮肉を持って。

 

「木が倒れた時にそこにいた一人の男に、聞こえているかどうかわからない場合、
音の存在はどうなるんです

『沈黙と叫び』より


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