★ネタバレ感想★


堕ちていく僕たち
Falling Ropewalkers

森博嗣


 D(堕落?)シリーズ。性別転換を引き起こすインスタントラーメンを食べた人々をめぐる人間模様を描いた連作短編。


 D(堕落?)シリーズ。性別転換を引き起こすインスタントラーメンを食べた人々の模様。インスタントラーメンを食べようが食べまいが、このシリーズに出てくる人々はみんな人間を辞めている――堕落しているダメ人間ですね(笑)。

 

堕ちていく僕たち Falling Ropewalkers
この話だけは作者がかつて描いたマンガのノベライズ。よってこの話が一番、作者描いたメージを純粋なまま持っているのだと思います。後の話はそのアレンジ。女性になったからといって、昨日まで同性だったものと×××出きる――ってことがすごく疑問だけど(笑)。体が変われば次第に心も変わっていくということなのかな?――アイアイのロボットのくだりが切ないです。女性って子供のことになると限りなく優しくなれるものなんでしょうか?それだけ男たちには決して理解できないものなのかも知れません。
 女性になることは堕ちていくことなのか――そんなの知りません(笑)。誤解されることを恐れず言えば――現在の日本の社会状態では確かに男社会だし、女性が男と同等に活躍しよう出世しようと思えば、女性としての性質を捨てて男のようの片意地はって我武者羅に生きていくしかない。――そう考えると確かに社会の中で男として生きていくということ一本のロープの上を歩くようなもの。それくらい削り取られた道の上を堕ちないように生きていく――つまらないことにこだわり、えらぶり、怒鳴り、そのくせ実はいつもビクビクしている――それが男なのかもね。男は、いつも子供みたいに夢を見てフラフラ定まらない――でも女性は妊娠出産という夢ではありえない現実を持っていますから。ユラユラ揺れるロープの上を歩くような、そんな生き方はなかなかできないかも。大地に足をしっかりとつけて、生きていかなくっちゃね。――それに張られたロープは1方向、行くか帰るか、止まれば堕ちる、でも大地の上は自由自在、四方八方どこへだって行ける――止まっていることだってね。

舞い上がる俺たち The Beautiful in Our Take off
男になることが舞い上がることなのか――そんなことも知りません(笑)。同人女同士が男になっちゃったら――そりゃあものすごいコトするよね(笑)。そういう女性にとって、男は自分たちとは全く違う生き物で、すごく純粋な存在らしいです。現実に生きている、生きざるを得ない女性としたら、男は風船みたいにふわふわ舞い上がっていると思えるかも知れなしいし、性格的な意味でも陰湿でグチグチする(と俗に言われている、本当かどうかは知らない)女性よりも、男のほうがさっぱりして夢みたいで綺麗とおもえるんだろうね。――特に現実を生きたくない人間にとっては。でもコレは男でも、女性でも同じでしょう。自分たちとは違う存在だから、遠くから見ているだけの存在だから、憧れるし素敵だと思う。――自分と違う性別というだけで、その存在は現実ではないファンタジィになる。男が女性にとんでもない妄想を抱くのも、女性が男同士をXXXさせるのも、現実ではないファンタジィとして見たいからでしょう。――モッチャンが自殺しちゃったのは、ファンタジィだった男になって、やっぱりそれも現実だって気がついたからかな?モッチャンは男よりも人間よりももっと純粋な、もっと高い、猫になれたのでしょうか?――きっとそうだね。

どうしようもない私たち The Beat of Rolling Rubbish
性別の変えるラーメンを使ったオチがあって、とても解りやすい面白さのある作品。ただ前2作にあった切なさが影を潜めてしまったのが少し残念かな。しかし男っていうのは、どうしてこんな夢の部分に夢中になってしまうんだろうか?打算的で現実的な女性の視点と対比されて、男の子供っぽさ、現実からフワフワ浮き上がってしまっているところが浮き彫りになってます。そのくせいざとなると男はなんとか表面を取り繕おうとする、自分さえ良ければ良いという部分がある。逆に女性っていざとなると肝が座って「どうとでもなれ」的な部分があるのかも。

どうしたの、君たち Pretty You and Blue My Life
冒頭からの自分の性癖(?)を淡々と告白していく部分に、どこか乱歩的で『屋根裏の散歩者』あたりを思い起こさせます。口調とか冷めているんだけど、でもどこか情熱的な感じがするあたりが、やはり内にこもった暗い情熱を感じさせ淫靡です。「私」は人間の自然な形の中の美を見たいんだとか言っていますけど――でも淫靡(笑)。「一線を越えない自制心があるかないかだけが、正常と異常を分ける唯一のものだ」というくだりが印象的。いいわけめいてもいますけど(笑)、でも一面ではそこに真実があると思います。人間の中ってヘドロみたいにドロドロしたものが必ずあるでしょ?どんなに清まして取り繕おうと。誰だって欲望はあるし、実行すれば犯罪という凶悪な妄想に浸ることだってあるでしょう。生まれついての聖人君主などいない――という性悪説信奉者なのです、ふたばは(笑)。その薄汚れた欲望を隠せるか隠せないかで、人を正常と異常に分けるのでしょう。――最後の一線でなんとか踏みとどまっている「私」ですが、これから食べることになるラーメンによって彼はその線を踏み越えて堕落してしまうのでしょうか?

そこはかとなく怪しい人たち The Phantom on People's Head
えっと……。これは叙述ミステリィなのかな?(笑)。素直に読めば、実は真由子さんはインストラーメンを食べませんでした!男になったわけではなくて単なる大柄な女性でした!――ということになります。頭の中に刷りこまれた設定が、思わせぶりなことを書かれただけで勝手に決めつけて思考を暴走させて読んでしまう。――頭で思い描いたいもしない幽霊を見たということでしょうね(笑)。――しかし!!これだと素直過ぎて、さらになんか裏があるんじゃないかと思わず勘ぐってしまいますよね(笑)。真由子さんは女性なのは良いとして、彼女は女性しか興味を示さないんだから、TACK-BOCKの草野亜紀陛下は実は女性だった!そして真由子の部屋で残されていたラーメンをつい食べてしまった!!――とかね(笑)。しかしこれは勘ぐりすぎ。地の文で陛下のことを「彼」という人称であらわしていたし、第一、朝作ったの完全に延び切って冷えきったラーメンをいくらなんでもつまみ食いしたりはしないだろうしね(笑)。

 

生まれたとき、
僕はもっと高いところから落ちてきた。
そして、ロープにしがみついたんだ。
ロープの上に落ちたから、
僕は生まれた。
そこに留まるバランスと、
そこに留まる執念を、
なんとも潔く飲みこんだもんだ。

以来、ロープの上を渡り続けていた。
でも、
もう、終わったんだね。

――『堕ちていく僕たち』より


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