★ネタバレ感想★


星を継ぐもの
INHERIT THE STARS

ジェイムズ・P・ホーガン


 月面で発見された宇宙服をきた死体。だがその死体は死後5万年前に死亡していたことが判明する。'チャーリー'の名づけられた死体を巡り、様々な分野の専門家が研究をすすめるが、その正体は知れない。


 SFである。ノベライズ以外の、本格的なSFを読むのは初めて。

 本作の構成は、月より発見され地球人と同じ身体的特色を持ちながら五万年前に死んだ‘チャーリー’が一体何者なのか?――という謎を中心に物語は進む。調査と分析から新事実が浮かび上がり、それらを繋いで真実を紡いでいく――という進行なので、それはふたばが読みなれているミステリィと似ている。――もっと、それがはてなく淡々と続いていくというのがどうもね。特に中盤ですがぜんぜんメリハリがないので読んでいてすぐ眠くなってしまった(笑)。ふたばがSFを読みなれていないためでしょうか? 専門的な用語がならべ建てられて、討論と真実の構築という部分がね、ちょっと退屈。 いや専門用語の羅列というのは別に良いんだけどね雰囲気をかもし出しているから。ただ本作は登場人物や物語よりも、その事実と真実の探求に力を注いで描いたみたいで、ふたばみたいにミステリィ好きといってもキャラ萌え、物語萌えの人間にとっては、それだけだとやはり退屈なのです。同じことを描くにしても、もう少しドラマチックに、キャラクタの魅力を押し出しながら、描いてくれたら、面白く感じられたのかなという気はします。これは人によっては全く逆の感想をいう人がいそうですけどね(笑)。

 でもまあそれは中盤までで、‘チャーリー’の手記が解読されて、彼が小惑星帯にあったというミネルヴァ出身でその衛星にいたはずなのに、長距離移動の手段を持たなかったはずの彼らが地球の月で発見された、その矛盾が示されると、俄然、面白くなってきて一気に読んでしまいました。ミステリイでいうところのトリックが示されて、それを解き明かすという方向がはっきりと示されたからでしょうね(笑)。そしてそのトリックが秀逸。この大掛かりさはさすがジャンルがSFだからでしょう。大き過ぎて誰も気付かないという(笑)。星星を渡るロマンチシズムに裏打ちされたこの大掛かりさはある意味感動的でもありますね。そしてそのトリックがとかれたことにより、すべてのパーツが矛盾なく説明できるようになり‘チャーリー’が何者であったかも分るというのがいいね。さらにそれからミステリイでいうところのどんでん返しもあって――。いやSFだと思って読んでいたら、実はしっかりミステリイじゃ! まあテーマ的にはしっかりSFだったんでしょうけど。――人類がどこからきて、どこへ行くのか、という。

 タイトルの『星を継ぐものINHERIT THE STARS』が実はネタバレになっているね。それはミネルヴァから地球へ渡り人類という種を受け渡した「月」のことであり、人類そのものであった‘チャーリー’たち「ミネルヴァン」のことでもある。さらにはミネルヴァンを作り上げ星ぼしの彼方へ去ったガニメアンより、恒星宇宙を行く技術を受け継ぐことになる我々人類という種そのもののことでもあるわけだ。

 

 人間は決して後へ退くことを知らないのだね。人間はありったけの力をふり絞って、地球上のいかなるどうぶつも真似することのできない粘り強い抵抗を示す。生命に脅威を与えるものに対しては敢然と戦う。かつて地球上に人間ほど攻撃的な性質を帯びた動物がいただろうか。この攻撃性にゆえに、人間は自分たち以前のすべてを駆逐して、万物の霊長になったのだ。

 恒星宇宙はわれわれが先祖から受け継ぐ遺産なのだ。ならば、行ってわれわれの正当な遺産を要求しようではないか。われわれの伝統には、敗北の概念はない。今日は恒星を、明日は銀河系外星雲を。宇宙のいかなる力も、われわれを止めることはできないのだ。

――クリスチャン・ダンチェッカー


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