★ネタバレ感想★
キノの旅
時雨沢 恵一
<あらすじ>
しゃべるオートバイ(モトラド)・エルメスを相棒に色々な国を旅する少女・キノの旅を描いた連作短編集。
<感想>
キノとエルメスの旅はまるで『銀河鉄道999』だと思った。『999』と同様に、この物語は「寓話」だと思う。
プロローグ「森の中で・b」―Lost in the Forest・b―
自分の心が汚い時に、世界に触れるとその世界が美しく感じるという。――逆に、汚い世界にを見つづけていれば、自分の心の美しさを感じるのだろうか。
第一話「人の痛みが分かる国」― I see You. ―
「人の痛みが分かる」とは人の気持ちを「知る」ことではなく、人の気持ちを「思う」ことである。人と人の間には「暖かさ」があるだろう。
第二話「多数決の国」― Ourselfish ―
政治形態が間違っているのではない。運用する人が間違うのである。反対する人々を弾圧する行為が間違いである
第三話「レールの上の三人の男」― On the Rails ―
レールの上を進むのはとても楽だ。しかし、いつのまにかにとんでもないところへ連れて行かれている。
第四話「コロシアム」― Avengers ―
人の本性は粗暴にして凶悪。それを矯正するのが人の理性であり叡智。それこそ人間にとっての最も尊いとものだ、と信じている。
第五話「大人の国」― Natural Right ―
子供と大人を分けるもの――それは自覚であると思う。「自分は子供だ」という。
第六話「平和な国」― Mother's Love ―
現実の僕らにとっての「戦争」とは「TV」の中にある。TVの中で小さなウソ臭い光が瞬くたびに多くの人がこの世から消える。僕らの平和はそんな現実に支えられて存在している。――「平和の国」と何処が違うのだろうか?
……ちなみに「母の愛」もフィクションの中にしかない。――現実はそんな世の中だ。
エピローグ「森の中で・a」―Lost in the Forest・a―
今まで語られたこの物語の中に、キノの「旅」の本当の理由がある。
ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ。そうとしか思えない時があるんだ……。でもそんな時は必ず、それ以外のもの、たとえば世界とか、他の人間の生き方とかが、すべて美しく、すてきなもののように感じるだ。
――キノ