★ネタバレ感想★


黒祠の島

小野不由美

 


 失踪したノンフィクションライタの葛木志保を追い、友人の式部剛は彼女の生まれ故郷「夜叉島」へと渡る。そこはまつろわぬ神を祭る「黒祠の島」であった。一見人当たりがよさそうでありながら、どこか拒絶している島人たち。葛木志保はどこへ行ったのか?やがて式部は、無残に惨殺された女性の死体を島を支配する神霊家が闇へと葬ったことを知る。


 古きからの因習が支配する「孤島」を舞台に横溝正史ばりの伝統的な本格ミステリィを展開――と思いきや、実は作者の描きたかったものとは物理的に閉ざされた孤島という舞台装置を用いた本格ミステリィをではなく、因習に支配され精神的・心理的に閉ざされている今の日本とは別世界そのものを書きたかったのではないだろうか。――「黒祠」という日本の社会からは迫害されかねないものを崇めることで、外から隔絶するというより内へと結実してしまった異世界を。それは主人公・式部剛が最後まで島の「外側」にいる訪問者だったことからも分かる。――結局、式部はこの島の誰とも交われなかった。外側にいるからこそある意味では島の真相を島人以上に知りえたにもかかわらず、式部は事実は得ても、真実へはだどりつけなかった。
 現実社会において、社会によらない個人の復讐が許されていないのは、それがその社会の規範を崩すからだ。式部にとって、犯人の行動は理解できても(許せないにしても)、解豸の行動が理解できないのは実は当然のことだ。なぜなら犯人の行動は式部の所属する社会においてありえることなのに対して、解豸の行動は彼の所属する社会規範から完全に外れるからだ。しかしこの黒祠の島においては解豸の行動こそが社会規範なのである。世界が違うのだ。罪に対する解豸のさばきこそがこの島における社会的な復讐――罰なのだ。式部はそれを知識としては手に入れたが、心底の理解・納得はできなかったのは彼は異界を訪れた客人だからで、作者・小野不由美がファンタジィ作家出身であることが、あるいはそこに強く現れているのかもしれない。

 個人的な感想をいうと、ラストの解豸と式部の会話で真相が明かされるシークエンスがお気に入り。安良が現れて解豸が存在することを匂わせたときに、誰が解豸なのか分かったけど(遅いか?)、そのあり方――あのダークさが個人的にはゾクゾクとしました。具体的に言えばP319ページから320ページあたりのセンテンスにビンビンと(笑)。あどけなさそうな美少女 (勝手に決めてますが)と行動の残虐性のギャップ。いやむしろその残虐な行為をあどけなさそうに行うというのが、もう(笑)。――事件の真相よりも楽しかったです。

 

「けれども……それでは、私は誰を殺せば良いのです?永劫、誰も殺してはならないのでは、愉しみというものがありません」

――神霊浅緋


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