★ネタバレ感想★


クビツリハイスクール戯言使いの弟子

西尾維新


<あらすじ>

 人類最強の請負人・哀川潤にむりやり引き受けさせられた依頼は、排他的なことで有名な超名門女子高の澄百合学園よりひとりの生徒を救出すること。「ぼく」こと戯言遣いの「いーちゃん」は、女子生徒に変装して学園へ潜入。ターゲットの紫木一姫と接触するが、彼女から、この学園が生徒たちからは「首吊高校」と呼ばれていること、特殊な能力者を育成するための学校だと知らされる。襲いくる「策師」萩原子荻たちの手を逃れふたりは脱出を試みるが――!? 戯言遣いシリーズ。


<感想>

 ――感想を一言でいうとすれば、生きている奴はろくでもないやつらばかりだ、かな(笑)。どいつもこいつも性格破綻者ばかり(笑)。主人公からして色々感じ入ったりしているくせにいざとなるとすぐに裏切ろうとするし、それに本作のヒロイン一番人畜無害そうなマスコットみたいな姫ちゃんが実は一番の鬼畜という――もうなんか裏切ることが本作の目的?――みたいな(笑)。人間みんな独りだぜ、っていうのがテーマか(笑)

 作品のノリノリは以前にも増してさらにマンガチックに。コードネームと特殊能力を持った美少女たちを育成する学園を舞台にしたアクションがメイン(笑)。前からキャラ萌えなライトノベル風の作品だったけどそれでも一応はまだミステリィ側にいたと思うけど、今回ミステリィの欠片がかろうじて入ったライトノベルスに(笑)。ミステリィファンからみればもはやミステリィでも何でもない――といいたいかもでしょう(笑)。キャラクタなんか前からマンガチックでしたが、もはや姫ちゃんだと、玉藻ちゃんだの、子荻ちゃんだのとミステリィのキャラクタを逸脱した変な能力と性格を持った人が満載で――ある意味吹っ切れた潔さ(笑)。今回はさっぱり登場しないシリーズのヒロイン(のはず)の玖渚友に似た雰囲気を持つ姫ちゃんに保護欲を感じたり拒絶したりと、主人公いーちゃんの行動原理が本作を読んだだけではさっぱり分らないところも、ほぼシリーズ展開で成り立っているライトノベルスの一見さんお断りなノリと同じ。

 講談社ノベルス20周年記念の密室本の1冊ということで、一応密室殺人なんかが出てきますが、実はそれよりも「学校」という密室を描くことのほうがメイン。
 物理的密室、心理的密室というのがあるとすれば、この「学校」というのは「社会的」な密室といえるかも。――ミステリィにおいて、密室とは普通、犯人や共犯者が作るものだけど、社会的密室は社会が隠す。外から中が見えないように、外の影響を中に持ち込まないように。「学校」とは現実から隔離されたひとつの異界です。中にいる者はそこでだけ通じるルールを遵守するよう強いられている。そこへ通う生徒たちは、特に展望もなく、意味もなく、自分を消して過ごしている。高校は義務教育ではないけど、でも大抵の人はそれを自らの意志で選んでいるわけではなくて、ただ行くのが普通だからと、意味もなくそこへ通いつづけている。「学校」へ通うこと、生活すること自体が意味みたいに。
 ――まあここで描かれる「首吊り高校は、特殊能力を持たされたなんかヤバイ生徒を作り出すために特化されて、普通の学校とは比較になりませんけど。
 でも学校中で何やっているか外から分らないという点では同じでしょうし、中にいる者が学校のルールに従わされて生かされているという点でも同じ。隔離された特殊な環境で生きることは、人間をスポイルするためには一番の方法。それしか知らなければ、疑問は持たない。
 ――そうやって学校で突出しないで生活させることで、子供たちが世界と一つになるための、社会にそって生きるための矯正しているみたいだ。

――ま、実際に今時の子供たちは、そんなことで矯正されはしないけど。……別なことで矯正されてはいるけどね。

 

「だけどな、狂っているかどうかっていうのは外から見ないとわからない。何かと比べない限り、異常と正常との区別なんかつかねーし、だったら自分が正常だと思うのが当然だ。そして学校っていうのは外からじゃ決して見れない密室だぜ」

――哀川潤


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