★ネタバレ感想★
微睡みのセフィロト
冲方 丁
第四次元感応者のよって引き起こされて大戦にて一度は滅びかけたものの復興しつつある地球。現在も通常人である感覚者と強力な力を持つ感応者の間には緊張した関係があった。そんなる日、統治機構の幹部が身体を300片に"混断"されて発見された。感応者によってでしか起こせない事件。大戦に妻子無残に殺されより自らもサイボーグ化された捜査官パットは、ヴァティシニアンより派遣されてきた感応者の少女ラファエロと共に捜査に当たるが……。
ハードボイルド+SFという作品。激しいアクションもあるのにどこか静かな雰囲気を感じるのは、サイボーグ戦士パットと超能力を持った天使のような美少女ラファエロとの心の交流を描いているからでしょう。特にパットは戦争で超能力者(作中では感応者=フォースと呼ばれているが)によって妻子を殺されて超能力者を憎悪し憎悪することで生き長らえている男。この物語が静かなそして深い印象を与えるのは、パットのさ迷う心の軌跡と探し続けた「答え」を見出すための物語となっているからでしょうね。
ラファエロの力が水晶の花や翼として現れたりとイメージがヴィジュアル的に鮮明に伝わってきます。特にエピローグのイメージは厳かで、この先手縁巣を読むと、実はこの物語はSFでもハードボイルドでもなくて神話だったのかなと思えるほど。さらに、字ではもちろんヴィジュアルとしても伝わらないはずの「匂い」も巧みに取り入れて斬新だなと感じました。
人はどう進化しようと、自分が見たいものしか見ないのかというのがテーマかな。進化すれば増長し、進化から取り残されれば粛清に走る。人は争うことでしか前へ進めないのでしょうか。
多くの者にとて、力に目覚める自分は夢幻の産物であり、
眠れる心こそが現実だった