★ネタバレ感想★


マイノリティ・リポート
The Minority Report

フィリップ・K・ディック


マイノリティ・リポート The Minority Report
 テーマは民主主義への懐疑かな。多数の意見を全体の意見として「選ぶ」のが民主主義の原理。少数意見はたとえ正しくても消えてしまうというところ、正しくなくても賛同できない意見が全体の意見とみなされてしまうところ、そこが民主主義の恐ろしさであると思う。
 それに多数意見――多数決んご縁利で多くの人が賛同した意見というものも実は幻想ではないかと思う。全く同じ人間がいないのと同じように全く同じ考えを持った人間などいるはずがない。少しづつでも違う意見があるはずで、しかしそれをあたかも同じ意見のように調整して全体の意見のように見せかけているのではないだろうか?――何かがそれぞれ違うはずの僕らを修正し同じところへ向かわせていないか?

ジェイムズ・P・クロウ James P Crow
 人間とロボットというものに置き変えられているけど、ジェイムズ・クロウの名に込められているものから分かるとおり、アメリカに置ける人種――白人と黒人――差別に対する風刺的な作品。人間は平等ではない人間はそれぞれ個人で能力が違うものだ認めあえれば、差別はなくなるあろうか? ロボットが去ったあとの人間の未来に不安があるかとロボットのL八七tがいうが、確かにロボットのような社会はいとめないだろうが、それならば人間なりの独自の社会を形成すれば良い、と個人的には思う。

世界をわが手に The Trouble with Bubbles
 文明が行きついてしまった人類の閉塞感の象徴がカプセルに包まれた小さな惑星「世界球」。何処へも行けない人類の縮図を自ら作ることで、拡大している錯覚を得るが、すぐにそれがただの錯覚でしかないと気がついて壊してしまうのかもしれない。せっかく作り上げた世界球をヒステリックに壊してしまう姿は、バベルの塔を破壊し人間を洪水で滅ぼしたという神の姿と似ているかもしれない。なるほど神は己の姿に似せて人間を作ったとは良く言ったものだ。地震や火山は長年蓄えられたエネルギーが限界を超えた時に爆発するわけだが、実はそのエネルギーとはこの世界を作った者の「ストレス」なのかもしれない。

水蜘蛛計画 Waterspider
 映画『ギャラクシークエスト』のもとネタ――というか、よくある話ではありますね。SF作家の空想が未来では予知として捕らえられている――もしかしてノストラダムスも、全然予言のつもりで書いた文章じゃなかったりしてね(笑)。パロディというのは「知っている」ことが前提の話であって、知らないと面白くも何ともない、一見さんお断りみたいなスタイル。実在のSF作家が登場しているようだが、SF初心者のふたばには何が何やら分からず終い。

安定社会 Stability
 ガラス玉に閉じ込められた都市のイメージは魅力的だけど、それ以外には特に見るところがない。面白いんだか面白くないんだか分からない作品。第一タイムスリップの部分に矛盾が発生してないか?

火星潜入 The Crystal Crypt
 やはりこれも都市をガラス玉に閉じ込めて人質に取るという設定は面白いけど、中途半端にアクションしている印象。むしろそこはバッサリ切って、なぜ嘘発見器に引っかからなかったのかという部分をクローズアップしたミステリィっぽい作品にした方が面白かったな――とミステリィファンとしては思ってしまったり。

追憶売ります We can Remember It for You Wholesale
 欲しがった「願望」が実はその心のそこですでにあった「記憶」だったというどんでん返しが皮肉な作品。いま生きている自分が現実か虚構かという、存在の根源的な疑問を投げかけてくる。が、本作を元にしてシュワちゃん主演のアクション映画(!)『ト−タルリコール』が作られてしまった(笑)。
 ただ「記憶」が現実の出来事を記録した物と誰が保証できるのあろう? 「記憶」は時間と共にどんどん風化して細部は不鮮明となり、一方で一部分だけが美化されて拡大していくのに。「記憶」とは記録を元にしたその人の願望に他ならない。――それがイヤな記憶でも。心の奥でいつのまにか価値あるものに変換している。

 

「これにくらべれば、人間本来の記憶――歪みは言うに及ばず、さまざまな不確実さや省略、脱落、そういったもののつきまとう本来の記憶の方が、ずっと代用品に近いんですからね」

――『追憶売ります』


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