★ネタバレ感想★


真夜中の切裂きジャック

栗本薫


 「死」や「闇」をテーマにした短編集。人間の内面のドロドロした混沌を描きつつ、その先にある死や闇をどことなく美しく、請い慕うように描いているのが特徴。栗本薫の死や闇への憧憬が分かるかもしれない。

真夜中の切裂きジャック
 幻想や妄想が輝くのは幻想や妄想として存在しているからであって、もしそれが現実に現れてしまったら、その輝きは失われてしまうのかもしれない。

羽根の折れた天使
 親にとって子供が天使と思えるのは、子供の人格を認めず自分の一部と思っているからだ。しかし子供はいつだって天使なんかじゃない、一個の人間である。――今も昔も。

クラスメート
 ごく平凡な主婦の日常の中に、突如現れる「死」の恐怖。「死」の間際に日常が幻想へ帰っていくのが「らしい」ところか。そもそも「同窓会」というのが日常ではないが、しかしかつては日常だったものが、時がたつと日常ではなくなっている。それが不思議だ。

獅子
 「死」に臨み、そのわずかの間で、輝き尽きようとする人間の意思が美しい。

白鷺
 「芸術」と「芸」とは違うものらしい。普通「芸術」は新しいことにこそ価値がある。しかし「芸」は変わらないこと――永遠に存在する「美」にこそ価値があるようだ。

十六夜
 
芸ごととか芸術とか、そう言うものはきっと、現実の出来事から切り離されていなければ達成できないのだと思う。つき抜けるか、あるいは置いていかれたかという違いはあっても。

<新日本久戸留綺譚>猫目石
 
結局、印南薫の前に何が現れたのかは最後まで分からない。それは、僕らの想像力がそこに現れた存在より劣っている証拠だろう。……それを見たいと望むのならば、闇の中を見つめるがいい。闇の中にあらわれたもの、それが彼らだ。

 

いつか僕がこの猫目石に帰ってゆくだろう

――印南薫 (『<新日本久戸留綺譚>猫目石』より)


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