★ネタバレ感想★
人形幻戯
西澤保彦
<感想>
<神麻嗣子の超能力事件簿>シリーズ第6弾。第3短編集。
『不測の死体』
能解さんの一人称。物体を遠くから取り寄せたり、遠くへ飛ばしたりするアポーツ(という表現は作中には出てこないけど)という能力が登場。
結局、ミステリィの部分が犯人側のミスによって作られているというのがどうも……。確かに『不測の死体』だけどさ。そのミステリィの部分自体もそれほど不思議な感じがしないしね。
『墜落する思慕』
神余響子ちゃんの一人称。サイコキネイスが登場。
わざわざサイコキネシスを用いて少年を高くまで持ち上げて墜落死させたのはなぜか?というこれは魅力的な謎。自分と同じような境遇なのに相手は良くて自分は駄目となったとき、自分のすべてを否定された感じがするという動機が例によって西澤ミステリィらしい突飛なでも「ああ分かる」という感じでとても良いです。自分は最高だぁ!!といううぬぼれやさんでない限り、こういう思いは誰だって持つものね。聡子さんの電話は唐突だけど、一応前振りになってはいるし。響子ちゃんと嗣子ちゃんの比較も前振りだけど、でも嗣子ちゃんだと特別でも誰もが納得してしまうところが不思議ですね。
『おもいでの行方』
レギュラーメンバー以外の人称。記憶消去という能力が登場。
いつもと違う人称で目先が変わって新鮮ではあったけど、ノケさんの推理がどうも納得しがたい(綺麗でない)ために、最後のどんでん返しが不発気味。タイトルに『おもいで』とあったので、切なげな話を期待したけどそうでもなかった。
『彼女が輪廻を止める理由』
本作もレギュラーメンバー以外の人称。フラッシュというイメージを他人に転写する能力が登場。
これはとても好き。タイトルのセンスからまるでユリっぽい雰囲気、ぶっ飛んだ意外な真相、それを疑問におもわせない論理まで、まさにすばらしい出来。なにより独立した短編としてみても非常に良く出来ているのがグットです。余分な部分も足りない部分もない。最初から最後までとても綺麗にとっている。まさに西澤ミステリィの真骨頂絵しょうね。逆に欠点はレギュラメンバーの出番がほとんどないことでしょうが、でも個人的にはそれを欠点とは思わなかった。
自分の意思によらずぐるぐると人を巡っていく傘やライターと自分を重ね合わせて、誰からも本当の自分を見てくれないこと思い悩む女性。でも本当は自分だって他人のことを見ていないんだよね。でも最後にはそれに気がついて輪廻を止めたんだからましか。死を望む輪廻が異常。怖いです。――あと遅塚聡子さんって本当に素敵な女性だですね。
『人形幻戯』
本作もレギュラーメンバー以外の人称。見えない火の玉を飛ばすフラッシュオーバーという能力が登場。
超能力自体や結末を導き出す論理はあっさり目。但しちょっと見方を変えれば真相がわかるという今作の謎解きの方が個人的には切れ味は良いと思う。例によって動機は西澤ミステリィらしく異常(誉め言葉)。――だけど分かるんだよなあ(苦笑)。非日常を求めてしまう人々。人形を使ったままごとのように、日常に自分の妄想を投影しようとする一人遊び。誰だって目の前に異星人や魔法使いが現れて「君は特別だよ」と言ってくれるのを待っているもの。一度下り始めたら、重力のせいだと言い訳しつつ自分の力で下っていくだろうね(笑)。
『怨の駆動体』
ひさびさ嗣子ちゃんと保科さん出ずっぱりボーナストラック。サイキック能力が登場。
出ずっぱりといっても話自体が短めで、ただひたすら事件のことについて話し合っているという構成が、「せっかく出てきたのに嗣子ちゃんの可愛らしさを強調する部分がまるでないジャン!と」不満だったりするから人間勝手なもの(笑)。うらみや怒りで恋心すら忘れて突っ走ってしまうというのが分かるんだけどやはりはたから見るとこっけいで西澤センセイらしいオチ。ただやっぱり話が短すぎてデテール不足のためかいまいち納得しがたい感じ。
少なくともこのひとは。わたしの好きなこのひとは、呪われた輪廻を自分のところで止める勇気を持っているんだ。もし本当に彼女のことが好きならば、受け入れてもらえるかは別として、わたしだって――わたしだって……
『彼女が輪廻を止める理由』より