★ネタバレ感想★


両性具有迷宮

西澤保彦

 


<あらすじ>

 百合作家・森奈津子に突然男性器が生えた!?しかもそれはサングラスをかけた白クマ星人のせい?――しかしそんなことにも動じず、平然とその状況を楽しむ奈津子。しかし同じ擬似ペニスを生やした女性が次々殺される事件が起こって――?森奈津子シリーズ第2弾。


<感想>

 『森奈津子』シリーズ第2弾。前作はちょっとHなバカなミステリイでぶっ飛び具合が最高でしたが、今作はバカミスというより完全なエロ小説。女性に男根が生えるという設定こそバカですけど、それ以降の展開はアンドロギュニュスと化した女性たちが繰り広げる目くるめく官能の倒錯した性愛の世界(笑)。もともとが月刊誌に連載されていたということで、テーマがきっと「毎回一度はエロシーン」だったんではないでしょうか。半分くらいはその手のシーンで、職場で読んでいて困りました(笑)。さらに連載では毎回濡れ場があって良いでしょうけど、まとめて読むと濡れ場とミステリィ部分の繰り返しというパターン化していて、物語にメリハリがなかったかもしれません。

 でもその「倒錯した性愛」という部分が今作のテーマなんでしょうね。男根が象徴する男性至上主義的な性愛に物申す――というのが愛の伝道師なつこさんなのですね(笑)。そもそも性愛というのは相手があってのもの。互いに相手を気持ち良くしてあげたいというのが本来であって、むしろ相手と心を交わすためのもののはず。そう考えれば、ノーマルといわれる男女間の性愛の方が、男が攻めて女が受けるという世間通念に囚われて、男の一方的で身勝手な押し付けに堕してしまう場合が多い――というのが女性に男根が生えることで一層浮き彫りになるわけですね。バカげた設定だけど、意味はあるわけですね(笑)。

 さらに今回の連続殺人事件真相もその男根至上主義にあるわけで――ナイフというのは男根のメタファそのものですからね。――想像するに、トオル某という男に暴力で犯され続けたタクヤ少年。しかし助けを求めた女性が男根の生えた男性だったのがそもそもの悲劇。男のはずのタクヤ少年が男になれないのに、女性であるはずのそのひとが男の象徴たる男根を持っている――そのアンヴィバレンツに引き裂かれ狂ってしまったんでしょう。だから存在を許せない男性の身体を持つ女性を「壊す」と同時に、自分の立たない男根の変わりであるナイフでめったざしにしているわけですね。女役である自分には持ちえない男の肉体を憎みながら求めるという矛盾。――どちらにしろ、男根至上主義の性愛がもたらした悲劇。恋愛の、性愛の自由さとはいったい何なんでしょうか?

 

「奈津子さんにとってのセックスの実在とは何なんですか?」
相手との関係性。すべてはそれ次第」

――森奈津子


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