★ネタバレ感想★


殺意の集う夜

西澤保彦

 


<あらすじ>

 嵐のために別荘に怪しげな人々と閉じ込められてしまった万理と園子。深夜、男に襲われた万理は付加抗力からその男を殺してしまいその後ドミノ倒しのように他の5人も殺してしまった。途方にくれて園子に助けを求めるが、その園子も何者かに殺されていた。


<感想>

 タイトル通り別荘に集まった人々が全員殺人者だったという――何というかバカバカしく――そして面白い話(笑)。集まった人達が全員殺人者だというのはすぐに分かっちゃうし誰が園子を殺したのか?というのは実はあまり興味が持てませんでした。というのも「もう1つの殺人舞台」の話があったからきっとこちらの三諸が犯人なんだろうなと理由もなく漠然と想像していました。それに「もう1つの殺人舞台」の事件の犯人が万理なんだろうなというのも何となく分かっちゃいますよね。個人的に今作で一番ミステリィだった部分は、彼ら殺人者達がなぜ別荘に集まってきたのか?というところでした。これをどう処理するかでこの作品の評価が分かれるな。偶然とかは許せないぞ(笑)とか思っていましたが――まさか新聞の当たらないことで有名な占いに導かれてだったとはね。これは完全に意表をつかれました。すごくくだらないとも思いましたが、でも「ああ!」と膝を打ったというのも事実。散々出てくる占いの話、ギャグだと思っていたのに謎の一端をになっていたなんてね。こんなバカバカしい話なのに無駄な部分は1つもなくすべてが伏線になっている最高のロジックミステリィになっているのはさすがです。理想的なミステリィの形態と言えるのに、こんなにバカミステリィというのは西澤センセイの真骨頂でしょうか。最後の一言の衝撃――はちょっと蛇足かなと個人的には思いました。

 あと今作の特徴といえば、異常さのユーモアかな。死姦とか食人とか幼女殺人とか――そういう異常性愛者が続々出てくる。でもそれがあまり突き詰めて書かれていないので何となく滑稽だし面白い。しかし、よくよく考えればとても異常だし、ブラックユーモアというか、バカミステリィながら背後に潜む暗さみたいなものを感じます。この「異常さ」というのが「ロジックミステリィ」と並ぶ西澤ミステリィの特徴でしょうね。他人には理解しがたい異常としか思えない人物たちをロジック的に書き出す、これは西澤ミステリィではよく登場する犯人像です。今回も三諸の女性に対する嫌悪感とか、しっかりと論理的に書き出されてはいるけど――結局母親を殺せなかった父親の身代わりをしているんだよね――やはり感情的には理解しがたい異常な動機です。解説を書かれている千街晶之さんが「(西澤センセイの」人物描写が、実に辛らつな視線に支えられている」と書かれていますがなるほどと思いました。

 

自分を商品化するのはいいことだと、あたしはあっさりと信念を変えた。(中略)普通のサラリーマンだって、いわば己の能力を商品化して給料を貰っているわけでしょうが。
己の性とは言わば、ひとつの能力なわけだから、それを商品化したって何の不都合もない筈


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