★ネタバレ感想★
占星術殺人事件
島田荘司
<あらすじ>
昭和11年――1人の画家の狂気が生み出したアゾート――6人の処女から肉体の各部を取りだし完全な女性を作り出す――。その狂気が現実化したようにその画家の6人の娘たちが体の一部を切取られたバラバラ死体として次々発見される。しかしその画家はすでに何者かに密室で殺されていた。40年以上もの間、人々を悩ませたか怪事件に占星術師・御手洗潔が挑むが――!?
<感想>
とにかくこの作品の真価はアゾート殺人で用いられたトリックにありますね。それがこの作品のすべてだと言って良い。死体を切り取って完全な人間を作りだす「アゾート殺人」――狂気と幻想に満ちた雰囲気――設定――は、しかし極めて合理に収束していく。それがとても良いですね。個人的に好みなタイプです。乱歩より横溝が好きというのかな。同じように狂気に満ちた作品のようで、乱歩はその狂気に引きずられ、横溝は狂気が合理の為の装飾になっている。どちらが良いというのではなくてふたばは後者のほうが好みなのです。今作も後者。詩的で幻想的な事件も解き明かされれば、実は手法はひどく単純。しかしその衝撃はきわめて強烈で腑に落ちる。トリックの見本みたいなトリックですね。バラバラ殺人の動機においても、これくらい単純かつ合理的なものってちょっとないと思います。
御手洗潔のキャラクターは和製「ホームズ」なんでしょうね。躁鬱の気があるところといい、占星術師という設定も「ホームズ」当時の私立探偵くらい胡散臭いでしょう。現代で私立探偵といったらハードボイルドになってしまうだろうしね。御手洗が浮気調査をしているとも思えないし。途中で唐突にホームズ談義が入るのも、その辺を意識させようということでしょうか。エキセントリックな変人の探偵役というのはステレオタイプではあると思いますが、個人的には大好きなので見たらいのキャラクターは気に入りました。最近では探偵役も無個性な回答を出す装置みたいな感じの人が多いので、リアルではないとはいえこれくらいぶっ飛んでいるキャラもかえって新鮮かもしれません。
不満点は物語にメリハリがないということでしょうか?考えて見れば、過去の事件を御手洗と石岡の2人でああでもないこうでもないとやっているだけ。京都へ行ったのもほとんど意味はないし。猟奇的な設定も良いし、御手洗のキャラクターも素敵。そして何よりトリックが抜群。なのにストーリーはあってなきが如し。同じ設定キャラトリックを用いて、もっと魅力的なストーリーが作れただろうに。それが個人的にはとても惜しいと思います。
人間一人何十年も生きて、そのすべてを消し去ろうと決心したんだ。あらゆるそれこそ数えきれないほどの事情がある。――黙って死ねばたくさんさ!
――御手洗潔
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