★ネタバレ感想★


パーキー・パットの日々
THE BEST OF PHILIP K. DICK

フィリップ・K・ディック


ウーブ身重く横たわる beyond Lies the Wub
 ????正直、良く分かりませんでした。これは、実はウーブは精神寄生体で船長が乗っ取られてしまったということでしょうか? それともウーブは船長の思考を読んでいたのだから元々船長の知識だったということ? ――あるいは食べることで、ウーブの知識を搾取した? 人間は、多くの物を搾取して生き続ける「豚」だということですか?

ルーグ Roog
 ????これまた良く分かりません。世界は自分を理解してくれないということと、世界を自分は理解できないという、その齟齬を、人間の身近にいて通じ合っているように思えながら、本当は自分の思いを投影しているに過ぎない「犬」と人間の関係を通して、描いたのでしょうか。

変種第二号 Second Variety
 誰がクロウ――殺人ロボットか分からない、というのがミステリィ的な求心力となって、とても分かりやすい作品。分かりやすい――文字通り――気の効いたオチもあるし。それに、自分が信じている物が、実は、全く違う物にすり変わっているかも知れない、という不安を描いているところが、とてもディックらしいと思いました。――クロウたちが、数種類の同じ固体がたくさんあってしかもそれがそのうちお互いを殺しあうかもしれないというのは、同じイデオロギーに染まった集団が違う集団と殺しあっているという現実その物であり、実は、クロウは人間の変種として描かれているわけですね。

報酬 Paycheck
 失われた記憶とその間の労働に対する報酬と与えられた7つのガラクタ、しかもそれを選んだのが自分自身らしい――という魅力的な設定。そして伏線がラストに集約されるミステリィ的なサプライズ・気の効いたエンディング。ミステリィ好きなので特にそう思うんだろうけど、とても上手い作品だと思いました。先にジョン・ウー監督の映画版を見てさえいなかったら、その傑作具合に感動していたかもしれない素晴らしい作品。――でもデイック的には、政治的集団である国家と、経済的集団である企業の間にあって、双方より良いように利用される個人がいかに使い捨ての歩であるかということと、その無力なはずの個人が自分の才覚によって双方を手玉に取って勝利する姿をこそ描きたかったのでは?、と思いました。しかも主人公が正義のヒーローとして戦うのではなく、あくまで個人の保身のために戦うというのが良いよね。正義とか、ヒーローとかだって、所詮は集団の利益を守る存在でしか無いからね。

にせもの Impostor
 いかにもディック的な実在不安を描いた佳作。考えてみれば、だれだった自分が自分であることを証明できない。でも社会が平和であれば、そんなことを心配する必要はないのだけど。やはり全体主義というのは恐い。恐怖で国民を支配するというのは、某米国そのものですよね。

植民地 Colony
 世界が、自分が見ているままではないかもしれないという恐怖。被害妄想ここに極まれりという感じ。身近な物品が、自分に襲いかかってくる――というのはちょっと末期かなあと思うけど。ラストのすっぽんっぽんで逃げ出すという絵面が笑える。

消耗員 Expendable
 虫が襲いかかってくる――これも世界が、思った通りの姿ではないという恐怖であろうか。もしかしたら、頭がおかしくなった男の妄想を描いているだけかも知れないが。――ただ虫も人間も同じ――群体の一部に過ぎない消耗品であるということは確かだろう。――ふたばも、虫が嫌いだ。でも子供のころは平気で触っていた。いつのころからか、その形の奇妙さが恐いと思うようになった。――大人になって、神経が衰弱したせいかもしれないが。

パーキー・パットの日々 The Days of Perky Pat
 モラトリアムですね(笑)。失った昔を懐かしみ黄金時代を模した遊びに興じる大人たちと、新しい世界で逞しく生きる子供たちの対比。――生かされる大人たちと、生きていく子供たち。史かもそんな大人たちの興じる遊びが人形遊びとは(笑)。――全く成長することのない、ね。出来るだけリアルに世界を再現すべく精巧な模型を作ったり。――今のオタクの走りみたいな話。しかもこんなことじゃいけないと気づくのも、やはり今まで使っていたパーキー・パットの人形よりも大人で結婚し子供までいる新しい人形に触れて、というのだから。現実よりも、架空から学んでしまう大人たち。――いやな現実よりも、より理想の架空にこそ現実を感じてしまう、これがいわゆるハイパーリアルというヤツでしょうかね。

たそがれの朝食 Breakfast at Twilight
 平和な日常に隠れて、進行する危機。「隠れている」? そうじゃない。見ていないだけ、聞いていないだだけで、危機はいつも目の前にある。

フォスター、おまえ、死んでるところだぞ Foster, You're Dead
 政府と癒着する企業が、人々の「恐怖」をコントロールして儲ける、というのは、現実そのものですね。生命の価値が、金次第というのも。他人と同じでないと、阻害されるというのもね。――企業=政府を儲けさせない貧乏人は、結局、自分の生命を支払うしかなくなるのでしょう。

 

「今ではもう、個人にはたよれる場所がなくなった。だれも助けてくれない。個人は、ふたつの冷酷な勢力、政治的権力経済的権力の間に捉えれれた(ポーン)だ。」

――『報酬』


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