★ネタバレ感想★


前夜祭

リレー小説


<あらすじ>

 学園祭の前夜。跳び箱の中から発見されたのは、学園一の嫌われもの教師・体重100キロを超える巨漢の五百旗真子の死体だった。生徒たちは学園祭を中止にさせないため、とりあえず死体を隠そうと奔走するが、死体は様々な人によってあっちこっちに運ばれてしまい……!?リレー小説。


<感想>

 学園祭を邪魔する厄介な死体をどう隠蔽するかをめぐるミステリィ。ヒッチコックの映画『ハリーの災難』から着想を得たこの設定が抜群に魅力的です。その設定を生かすために「根幹にある1つの事件から派生する謎を各作家が描く」という趣向をとっているが、残念ながら各話の独立性は中途半端で、後半3篇は幹の部分が優先され枝葉の部分はおろそかになってしまった。もっと各話で作家性が出てバラエティに富んだものになるかと思っていたのでとても残念でした。

第1章・殺人喜劇の前夜 芦辺拓
 跳び箱とは学園物らしいネタですね。謎ときではなくて死体を運搬するアイデアを出させるというところが変わっていて良いかも。

第2章・死体はお気に召すまま 西澤保彦
 この話でもっともミステリイな所って、クビになるのが酒呑センセイではなかったという所……ではなくて高ノ沢さつきのキャラクタでしょう。前話ではまだ控えめだったけど、今回では鼻くそほじっているは、避け飲んで酒呑センセイを口説き始めるは……あまつさえ「ダーリン」とか言い出すし。前話のぶっきらぼうなキャラとは全く印象違っちゃってます(笑)。今話ではじけて後半まで大活躍。個人的には1番お気に入りのキャラクタです。彼女に限らず、登場人物たちが各作家間で書き継がれていく間にドンドン変化していくところがまた面白いです。酒呑先生なんか最初はそれほどでもないけど、ドンドン情けないキャラクターに(笑)。

第3章・死体は恋のキューピッド 伊井圭
 単作として1番ミステリイしているのはこれかな。死体を運ぶためのトリックという基本に忠実だし、とてもしっかりしている。でも個人的に1番気になっていたのはタイトルにある通り、死体のキューピッドが堀口夢ちゃんと誰との恋を取りもつのか?というところでした。

第4章・死体は呼び出しを受ける 柴田よしき
 今話から各話のミステリィという部分がほとんど無くなり根幹の部分が中心になってしまう。それが残念。今回はこれまでの伏線や登場人物、そして時系列の整理がメインの話。ヒロインの宇田川美香をはじめ手芸部員たちの様子が妙に普通の生徒たちっぽくって良かったので、彼女たちをメインにした独立したミステリィをぜひ読んでみたかった。

第5章・私が殺しました 愛川晶
 今回は調査篇というべきか。最終話に向けてのステップといった感じ。最後の犬のマタエモンが犯人であったと告げる1文もラストに向けての最高の引き。

第6章・名探偵は誰だ……っけ? 北森鴻
 各話メンバーによる真相へ向けての競争篇。最終話だけあって登場人物たちが大集合して異常な(?)盛り上がり。ミステリィの部分も「移動する死体」という基本設定を逆手にとって、実は途中までは死んでいませんでした!というところが、これはちょっと予想外でした(その他の動機や犯人はあからさまなヒントが出ているのでわかるよね)。各メンバー達が手に入れた手がかりからそれぞれのアプローチによって事実へ辿りつくというところが面白いですね。つまり今作は犯人は誰だ?ではなくて名探偵は誰だ!?というのミステリィだったのですね(笑)。商品は鮎川哲也賞(笑)。――本当になんでそんなにみんな拘ってるんだろうか?その方が犯人や動機よりもずっとミステリィでした。ちなみに下に選んだセリフはふたばが1番笑ったセリフです。最高でした。

  

「ゴメンね、国保くん。わたし鮎川哲也先生の作品を読んだことがないの。それに……それにわたし本当に好きなのは山田風太郎先生なのよ、本当にゴメンね!」

――堀口夢


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