トドノネオオワタムシ カメムシ目 アブラムシ科 体長:約4o


飛ぶトドノネオオワタムシ
飛ぶトドノネオオワタムシ

 偶然ながら、この『東北の虫たち』でご紹介しようとトドノネオオワタムシの飛翔を撮影したわずか2日後に、読者の方から「雪虫《ゆきむし》」についてのリクエストがありました。
 北国、特に北海道では初雪前の風物詩として知られている空中漂う白い綿状の虫。その正体は、翅《はね》が生えて飛ぶことが可能になったアブラムシの仲間なのです。雪虫、または綿虫《わたむし》は彼らに付けられた俗称で、私も幼い頃からそれらの呼び名で慣れ親しんできました。
 11月の寒い朝、どんよりと曇った空を舞う数匹のトドノネオオワタムシは、本当に雪そのものに見え、小学校に登校途中、思わず手に取って確かめたこともあります。私はその頃から昆虫好きでしたので、それがアブラムシらしいことはすぐに理解出来たのですが、なぜこんな冷たい季節に彼らが現れるのかとても不思議でした。
 ところが、最近アブラムシに詳しい方に伺ったところ、雪虫といわれる種類は、晩秋だけに特別に発生する昆虫ではないそうです。年何回か世代を繰り返し、翅があって飛べる個体・有翅虫《ゆうしちゅう》が、暖かい季節にも存在するというのです。
 おそらく、春夏は、周りの植物やほかの虫やらがうるさくて、小さなアブラムシには気が付きにくいのでしょう。

前方から見たトドノネオオワタムシの飛翔
意外に翅《はね》が大きいことに気づかされます
前方から見たトドノネオオワタムシの飛翔

 トドノネオオワタムシの羽虫《はむし》が晩秋になると目立ち始めるのは、この時季、彼らが夏の間に過ごした1次寄主トドマツなど)から住みかを2次寄主(ヤチダモなど)の木に移す習性があるためです。
 彼らは、とてもスマートとはいえないあの飛び方で、命懸けの旅に出るのです。そうして、ようやく2次寄主にたどり着くと、産卵を行い、その一生を終えます。
 翌年の初夏、晩秋を旅したアブラムシからみると、そのひ孫たちが、今度はトドマツに向かって飛び立ちます。
 彼らが飛ぶ時は、いつも前脚をL字型に上げており、いかにも気張っているかのように見えるのが印象的です。


葉にとまる有翅虫《ゆうしちゅう》
葉にとまる有翅虫


INFORMATION
文中の赤字の部分は、当初「孫」となっていましたが、立正大学の青木重幸先生のご指摘により「ひ孫」と訂正させていただきました。

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