B 再びウトロへ
羅臼の町で昼食にラーメンを食べて、早
めに知床横断道路に出た。往路よりも視界は悪くなっており、慎重な運転で精神的にまいっていたが、眼下にウトロの港が見えた時はホッとした。予定を早めたお陰で1便早い観光船に乗ることが出来た。6月1日からは知床岬まで航海するのであるが、
まだ硫黄山までの折り返しコースである。乗船すると、案外豪華な客室の船のようだ。折角だから最初からデッキに出て直接にオホーツク海の風を
受けてみる方が賢明のようだ。峠からは見えなかった知床連山が鮮明に見える。繰り返しスピーカーから流れる「知床旅情」の曲を耳にし、「やっと知床にきたんだ」と言う実感が湧いてきた。オホーツク海の荒波で浸食された海岸は、様々な奇岩を出現させている。カムイワッカの滝は硫黄山から流れ出た硫黄が周辺を変色させていた。自然が醸しだす造形美は、人工のものでは太刀打ちできないのではないか!一時間半のクルージングの後、港が見下ろせる高台にある今夜
のホテル「夕陽のあたる家」にチェックインした。日没が6時45分となっていたので、それまで誰もいない露天風呂に浸る。又しても、自然と“しれーとこーのみさきにー はまなすーのさーくころ”と口ずさんでいた。このホテルは窓も開けそうだし、夕陽のいい写真が撮れそうだ。窓を全開にして三脚にカメラを固定したまま30分間の日没ショーをずっと眺めていた。浜茄子の咲く頃に是非また来てみたい、知床岬までの航路にも乗ってみたい。まだまだ、旅への憧憬は終わりそうにない。
C 知床五胡へ
昨夜の日本酒の酔いと運転の疲れか、9時過ぎに眠った為に日の出時間の4時前には目が覚めていた。朝風呂に入り、ホテル前の夕陽台の
散歩に出てみた。エゾシカが群れをなしていたが、奈良公園の鹿と違ってやや毛色は浅く、人馴れがしていない。私たちの姿を見ると走り去ってしまった。
朝食の後は、ネットで予約しておいた「知床体験ツアー」に出発だ。
“知床五湖自然観察ツアー
(4月下旬から10月下旬まで)
知床を訪れる誰もが知っている知床五湖。でもほとんどの方がその本当の魅力に気付かずに、急ぎ足で歩いているのがとても残念です。知床五湖は知床の自然を"ぎゅっ"と凝縮した場所。ネイチャーガイドと一緒に奥深い知床五湖の魅力に触れてみませんか。
午前8時30分〜午前11時30分頃まで”
「夕陽のあたる家」HPより http://www.yuuhinoataruie.com/
ワゴン車には、鹿児島から一人で熊を追い求めてやって来ていたアマチュアカメラマンと若い女性の二人連れと私たち夫婦の5人のツ
アーだ。車内で運転するネイチャーガイドの鈴木さんから五胡での注意事項や知床の自然の厳しさを聞かされる。キタキツネが道路を横切っていた。道路の両脇に何軒もの廃屋が目に付く。農家としてこの知床に入植してきたが、知床の厳しい自然に立ち向かいつつも挫折して離れていった人々の無念を思うとやりきれなさを感じ最近みた映画、吉永小百合、豊川悦司、渡辺謙出演「北の零年」の場面が重ね合わさっていた。知床五胡の入り口駐車場にはツアーの大型バスが連なっている。主な観光ツアーは一
湖から二湖までの40分コースで散策路は繁華街を歩くような感じで賑わっていた。水芭蕉の花が満開だ。二湖からは知床連山が一望できる絶景の撮影ポイントだ。原生林の生い茂る林の中に、ヒグマが木登りで付けた深い爪あとが残るトドマツを見ると恐怖心を覚える。恐い物を見たさなのか、やはり見たい。そんな時「ガサッ」と音がして目をやるとヒグマではなく3頭のエゾシカが水を飲んでいた。三湖から四湖までくると団体ツアーの姿はなくなり、小鳥のさえずりが聞こえるほどひっそりと静まり返っていた。
五胡の半ばまできた時、先ほど単独行動で私たちを追い抜いていった男性が「熊がでたー」と小走りに戻ってきた。「みんなひと塊になって慌てないで様子をみましょう」ネイチャーガイドの鈴木さんの指示で全員が暫くカメラを向けるゆとりも
なく息を殺して20メートル先の熊と対峙していた。水芭蕉を食べに来ていたらしい母子熊2頭のようで1分間ぐらいで去っていった。鈴木さんは無線で事務所に連絡を入れていたが、単独行動では携帯電話も通じないこんな場所では慌てふためいただろう。大自然と向き合う恐怖を痛感した。
“ヒグマとの遭遇”というアクシデントが今回の知床旅行のハイライトになってしまった感じだ。世界遺産に指定されるこの知床も、後世の人類にまで残せる遺産としてだけではなく、自然は自然として人類が踏み込むことの出来ないものはそっとしておくことが大事な事ではないだろうか?
2005年5月28・29・30日