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| 原 作 | 光瀬 龍 早川書房・刊「百億の昼と千億の夜」より |
| 絵 | 萩尾 望都 |
| 初 出 | 秋田書店週刊少年チャンピオン1977年34号〜1978年2号 (原作は早川書房SFマガジン1965年12月号〜1966年8月号) |
| 単行本 | 全2巻 秋田書店週刊少年チャンピオンコミックス (第1巻 1977年11月20日初版発行 第2巻 1978年1月20日初版発行) 全2巻 秋田書店 秋田漫画文庫 1980年6月15日初版発行 全1巻 秋田書店 1984年9月5日初版発行 全2巻 小学館 萩尾望都作品集第2期全17巻よりそれぞれ1・2巻として (第1巻 1985年4月20日初版発行 第2巻 1985年6月20日初版発行) 全1巻 秋田書店 秋田文庫 1994年4月30日初版発行 |
| 人間とは?神とは?存在とは?アテネイの哲人プラトン、釈迦国の悉達多(しつだるた)、阿修羅王、ナザレのイエス、イスカリオテのユダは、世界を滅亡に至らしめる大いなる存在『シ』に翻弄される。 『シ』の命を受けた惑星開発委員会は、アトランティスを滅ぼし、悉達多を出家せしめ、イエスを操りゴルゴダの奇跡を起こし、そして遂には太陽系紀元二九〇二年、大宇宙に緩やかなる破滅をもたらしたのだった。 三九〇五年、深き海の底よりシッタータは目覚め、最早わずかな人々が生き延びているだけとなったトーキョーシティに於いてオリオナエと出会うも、『シ』の使者イエスに襲撃される。だがそこに阿修羅王が現れる。阿修羅王、シッタータ、オリオナエは、『シ』の意図を知るため、そしてこの大宇宙を破滅から救うために、イエスを追跡する。 人間の精神を記号化してそれを一枚のカードに記録することで様々な破滅から逃れようとしたゼン・ゼン・シティー。天上界の緩慢なる滅亡を甘んじて受け容れんとする梵天王(ぼんてんおう)、帝釈天(たいしゃくてん)の統治するトバツ市――兜率天(とそつてん)。かつて惑星開発委員会の拠点の存在していたアスタータ50。そこで阿修羅王たちは知る。「神は全ての生命を滅ぼすために存在していた――!」 その時、永劫の門より弥勒が出現し、阿修羅王に精神攻撃を仕掛け『シ』に敵対する存在、即ち阿修羅王、シッタータ、オリオナエを導いた存在を探ろうとする。そしてアンドロメダ星雲第八象限第二の腕――即ち《D》座標。だがそこは虚数空間だった。そこを脱出する際に、阿修羅王たちのプラス・エネルギーと虚数空間のマイナス・エネルギーが接触し、凄まじいエネルギーが発生し、また一つの都市が、一つの文明が無に帰したのだった。 阿修羅王だけが次の場所に移転し、そこでおのれを創造した存在と出会い、全ての真実を知ったのである。世界は――永遠に続くというのか。では私の戦いはいつ終わるというのか。既に帰る道はなく、新たな百億と千億の日々が阿修羅王の前に在るだけだった・・・。 |
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登場人物紹介
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「弥勒に会え!」阿修羅王の叫びは悉達多の信念を揺るがしたのだった。既に大宇宙は滅びへの道を辿っているというのに弥勒、そして転輪王は何故に座視しているのか――果たして弥勒は人類を救済してくれるのか。阿修羅王の説明に悉達多は何一つ反論できなかった。まさか弥勒が破滅をもたらそうなどと・・・。 ――第4章・阿修羅より |
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アトランティス伝説に魅せられた哲人プラトンは、アトランティスの子孫が住まう村を訪れ、そこで宗主の啓示を受け、司政官オリオナエとしてアトランティスの滅亡に立ち会う。アトランティスを壮大な実験舞台とした惑星開発委員会の目論見はアトランティスの滅亡を以て失敗に終わったのである。オリオナエは悪意に満ちた「神」に抗すべく“道標”として生きて行くことを決心する。
――第1章・アトランティス幻想より |
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阿修羅王
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オリオナエ
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阿修羅王に案内されトバツ市の地下、摩尼宝殿にて悉達多は弥勒とまみえる。だがそれは精巧な造り物だった。「五十六億七千万年後に弥勒が降臨するまでの間ひたすらに祈っていればよいのか?」阿修羅王の問いは悉達多の心を深くえぐったのだった。弥勒がもたらすのは理想郷か、あるいは・・・。 ――第5章・弥勒より |
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ユダの密告により捕らえられたイエスは法廷に引きずり出される。既存宗教の大司祭たちに陥れられイエスは磔に架けられる。だがそれこそイエスの、惑星開発委員会の望むところだった。ユダの懸念通りイエスはゴルゴダの丘にて奇跡を起こしてみせたのだった。かくして人間にとっての「神」への畏怖は揺るぎ無いものとなったのだった。 ――第7章・ゴルゴダの奇跡より |
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悉達多
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イエス
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ヨルダン川のへりにてナザレのイエスは大天使ミカエルの天啓を受け、ユダを含む弟子たちと共に諸国を巡り「最後の審判」を説いて回る。人々はその祝福に傾倒していった。だがしかしユダだけはイエスの教えに対する疑念が膨らんでいった。神とは――裁くものなのか?であれば我々の存在そのものが裁かれるべきなのか? ――第6章・ユダとキリストより |
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深き海より目覚めたシッタータはトーキョー・シティーにてオリオナエと出会う。オリオナエによれば大宇宙にもたらされた滅亡は、明らかに何者かによって計画されたことだという。破滅の兆しが顕れてから僅か千年余りの間に終焉の時を迎えようなどという事は、外部からの作用を抜きにして有り得ないからだ。
――第8章・トーキョー・シティーより |
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ユダ
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シッタータ
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シッタータはゼン・ゼン・シティーの真実を知る。ゼン・ゼン・シティーとは迫り来る破滅から逃れるために人間の精神を記号化しそれを一枚のカードに変換し、かくて作られた無数のカードを機械で管理している都市だったのである。A級市民にとってその都市は永遠に醒めることのない夢――理想郷だった。 ――第12章・コンパートメントより |
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ゼン・ゼン・シティーを脱出した四人が辿り着いたのは既に退廃して久しきトバツ市だった。そこで阿修羅王は帝釈天と再会する。世界の破滅をあるがままに受け入れようとする帝釈天に、蟷螂の斧と言われようともあくまで「神」に抗い続けようとする阿修羅王。それはあまりにも哀しき問答だった・・・。 ――第14章・トバツ市で待つものより |
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首相
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帝釈天
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「神」はやがて比肩するであろう知的生命体の誕生を阻むべく、その知的生命体に滅びへの蓋然性を与えていたのだ。その時永劫の門より弥勒が出現し阿修羅王に心理攻撃を仕掛ける。帝釈天率いる象兵の大群に取り囲まれた阿修羅王はおのれに使命を与えた存在を洩らそうとするが、すんでのところで弥勒を追い払うのに成功する。 ――第17章・幻の軍勢より |
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阿修羅王だけが終焉の地にいた。阿修羅王はそこで転輪王と会い、全ての真実を知る。「神」の正体を。世界の真実を。それは虚空の真実に他ならなかった。真実を知った今、阿修羅王は激しい喪失感に襲われた。しかしそれでもなお阿修羅王は先へ進まなければならなかった。既に還る道は無く、また新たな百億と千億の日々が阿修羅王の目の前に在るだけだった―― ――終 章・百億の昼と千億の夜より |
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弥勒
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転輪王
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解説に入る前に、先ず一九九七年七月七日にお亡くなりになられた光瀬龍氏に追悼の言葉を贈りたい。「百億の昼と千億の夜」。その気宇壮大なる題名に惹かれてかの漫画を手にしたのが小学五年生の時であった。断言するが、その漫画との出会いがなかったら私の人生は全く違ったものになっていた。また、思春期に於ける我が人格形成に影響を最も及ぼしたのも、その漫画であった。「百億の昼と千億の夜」との出会いからどっぷりとSFの世界にはまり、「幼年期の終り」「果しなき流れの果に」「二〇〇一年宇宙の旅」等を貪るように読んだ。だがしかし、現在に至るも私にとってSFの最高峰は「百億の昼と千億の夜」に他ならないのである。それは作家を目指す私にとっての最終到達点であると言える。何時の日か「百億の昼と千億の夜」を凌駕する作品を書くこと。それが我が人生に於ける最大の目標である。その決心を以て「時の支配者」光瀬龍氏に対する手向けとしたい。 |